ヨーロッパや中東、北アフリカなど地中海沿岸の地方では、何千年もの昔からオリーブオイルが生活必需品となっていました。その用途は広く、炒め物や揚げ物、サラダにかけるなど食用として使うのはもちろんのこと、炎症や痛み止めとして薬やマッサージオイルとして用いられたり、ランプの燃料、化粧品などあらゆる分野に使われていました。人々の暮らしに欠かせないオリーブは古代の文学や神話にも登場します。
アテネへの贈り物
ギリシャ神話の中に、オリーブの木が登場する有名な話があります。
アテナイ(現在のアテネ)の支配者を決めることになりました。候補者は知恵の女神アテナ、海神ポセイドンです。神々はアテナイ市に良い贈り物をしたほうが支配者となるように取り決めます。海神ポセイドンはアクロポリスの丘に海水の泉が湧くようにします。女神アテナはアクロポリスの丘にオリーブの木を植えます。それまで人類は焚火をしても燃料がないため、夜は暗闇に包まれていました。オリーブの木の実からとれた油は燃料となり、人類の生活をより便利で豊かにしました。食品や薬にもなるオリーブは非常に良い贈り物だと判断したオリュンポスの神々により、アテナがアテナイの支配者として認められました。アクロポリスの丘に建つ荘厳なパルテノン神殿は女神アテナを祀っています。アテナが植えたオリーブは、後にペルシャ軍によって燃やされても再び蘇りました。
オリーブオイルを作ったのは神?
オリュンポス12神の1人であるアポロンと女神キューレーネの間に生まれた息子、アリスタイオスは農業を司る神です。養蜂家であり、チーズ作りを発明し、オリーブの栽培とオリーブの実を圧搾してオリーブオイルを絞る技術をバルカン半島やエーゲ海まで広めたと言われています。また、オリーブから抽出した油で病気を癒したとも伝えられています。
ギリシャではオリーブを盛んに栽培し、オリーブオイルを食用や医薬品として用いたため、数々の神話でも貴重なものとして登場しているのです。